紛争の内容
最寄り駅までのバス交通至便の立地(バス停前の新築共同住宅)を選んだ入居者が、バスや大型トラックの騒音・振動が我慢できないとして、任意退去し、その後、損害賠償請求をしてきた事案。

交渉・調停・訴訟などの経過
民事調停前の事情としては、転居にあたり、転居先探索の協力など協力を惜しまなかったが、転居先管理不動産会社とのトラブルもあり、転居先の確保がままにならなかったようであった。
また、振動については、当該共同住宅建築前の地盤改良工事の内容を説明し、他の入居者全員からも、特段の振動・騒音被害の申告もなされていないこと、当該物件で体験居住した管理会社担当者も、振動騒音をひどいものとは感じなかったという。
調停においては、本人申立であることから、相手方である当方から、騒音振動被害については、受忍限度を超えるようなものではないことの説明、共同住宅ハウスメーカーの協力を得て、古くは農地であった土地の地盤改良工事の内容、そのコメント、ハウスメーカーからは当該共同住宅の仕様書などを取り寄せ、調停委員への説得理解に努めました。
調停員会は、申立人の求める賠償請求に対し、相手方は、従前退去協力金として支払う意思を示していたではないかとして、相応の負担ができないかと打診しましたが、従前の提案は、このような裁判手続きに持ち込まないとしての場合としてであるので、到底応じることはできないとして拒絶しました。
調停委員会は、申立人は強硬であり、訴訟も辞さないと述べているが、紛争終結のために、解決金を支払えないかと打診しましたが、訴訟提起をされるならやむなし、受けるほかないとして、断固として、支払いを拒絶するとの回答をしました。

本事例の結末
調停は、不成立となりました。
申立人は、訴訟提起をする意向を示していましたが、半年以上も経過しても訴訟提起はありませんでした。

本事例に学ぶこと
騒音、振動などによる賃借物件の満足な使用を妨げられたとして、損害賠償請求をすること、受けることがあります。
このような場合に、通常、客観的に一般人を基準にして、そのような振動、騒音を我慢する限度を超えたか否か、いわゆる受忍限度を超えた場合に、違法として評価され、賠償請求の問題となります。
まずは、客観的な振動の程度、騒音の程度の資料・データが必要です。
一方的な思い、感受性だけでは、当該騒音、振動が損害賠償請求権を成立させる違法性があるとは判断されません。

弁護士 榎本 誉