質問

建物所有者とA社とで、アパート全体を対象として10年間の定期借家契約を結び、その後、A社が一般ユーザーに転貸する(普通借家契約を締結する)という形で、サブリース契約を締結したとします。この場合、A社が倒産などによってその立場から離れた場合、貸主(建物所有者)は、転貸人(A社)と転借人(ユーザー)の普通借家契約を引き継ぐことになるのでしょうか。

回答

まず、転貸人が倒産した場合ですが、この場合は、転貸人が貸主に対して賃料不払いをすることになるでしょうから、貸主は転貸人との定期借家契約を解除することができます。

この場合は、貸主は、転貸人と転借人の契約を引き継ぎません。貸主は転借人に対して、建物を明渡すか、あるいは (貸主の言う条件で)貸主と新たに賃貸借契約を締結するか、どちらにするか決断を迫ることができます。
 これに対して、転貸人は倒産状態にはなっているが、賃料不払いなどの契約違反行為はまだないという状態のときに、現在の状態が続くことになります。この場合に、貸主と転貸人が定期借家契約を合意解約すると、転貸人が抜けて、貸主と転借人との間に賃貸借関係が成立することになります。

その場合、成立する賃貸借関係の内容は、貸主と転貸人間の定期借家契約なのか、転貸人と転借人間の普通借家契約なのかが問題になりますが、転貸人と転借人間の普通借家契約が、貸主と転借人間の法律関係の内容になるという説が有力です。

このような結果になることを考えると、転貸人に賃料不払いなどの債務不履行がないうちは、貸主と転貸人の定期借家契約を合意解約することは慎重になる必要があります。