紛争の内容
集合アパートを賃貸していたAさんは、当該集合アパートの配水管に不具合があり、漏水していることが発覚したため、その配水管の修繕をすることにしました。
不具合のあった配水管は賃借人Bさんが住んでいた一室の壁内にあったため、この壁を剥がして大規模な工事をする必要がありましたが、漏水期間が長く、床下に大量の水が流れ込んでいたと予想されたため、壁と床を大部分剥離せねば工事の終了までの見込み期間の目途は立たず、Bさんの一室が使用できなくなる期間は相当長くなると思われました。
そこで、AさんはBさんの賃貸借契約を合意解約し、退去を頂きたいと考えるようになり、Aさん自身でBさんに提案したものの、Bさんは「このアパートが気に入っているので、出たくない」と拒否し、Aさんは弁護士に依頼して交渉をすることにしました。
交渉・調停・訴訟等の経過
賃貸借契約の賃貸人側からの契約解除・更新拒絶は、借地借家法の厚い賃借人保護があるため、賃借人からの同意を得られない場合に完遂させることは、一般的に非常に困難です。
しかし、Bさんに対しては、裁判例や実際のBさんの転居による損害等を明確にし、退去のための解決金を具体的に提案しました。
本事例の結末
Bさんにも、代理人弁護士が就きましたが、Aさんはアパートの賃料等などを踏まえたまとまった解決金を払い、Aさん・Bさんも納得した上で合意解約及びBさんの退去に同意をいただくことができました。
さらに、Aさんが想定していたよりも速やかなBさんの退去をいただくこともでき、Aさんは無事配水管の修繕工事に取り掛かることができ、他の賃借人や周辺住民にも漏水によるご迷惑を最小限にすることができました。
本事例に学ぶこと
借地借家法による賃借人保護は厚いものですが、裁判例などを引き合いに出すことにより、合意解約を得る可能性もあると感じました。
弁護士 相川 一ゑ