しばしば、家の前の道路が実は、私道、しかも、複数の人々の共有であった、という相談をお受けします。
これは、不動産業者によって開発された分譲地などにおいてよく見られますが、分譲の場合以外でも、過去の経緯や相続によって生じることもあります。
この共有私道について、法務省の「共有私道の保存・管理等に関する事例研究会」が新たなガイドラインを策定しましたので、同ガイドラインを踏まえ、共有私道について、さいたま市大宮区で30年以上の歴史を持ち、不動産に関する法律相談に注力し、また「不動産専門チーム」を擁する弁護士法人グリーンリーフ法律事務所が解説を行います。

共有私道とは

道路とは

そもそも「道路」を定める法律は様々なものがあります。
一般的には、道路法や建築基準法によって定義されています。
次に、「道路」を大きく区分すると、国や都道府県・市区町村が管理する「公道」と、個人が所有する「私道」に分かれます。

私道とは

そして、先に述べた事例研究会は、「私道」を、「国や地方公共団体以外の者が所有する、一般の用に供されている通路であって、法令上、国や地方公共団体が管理することとされていないもの」を研究の対象としています。

単独所有の私道と共有私道

この点、私道が単独所有であれば、その所有者単独の判断で対応することが可能です。
しかし、共有の場合には、複数の所有者がいることになり、所有者ごとの意向の違いや所有者不明等の理由により、問題が生じたときの対応が難しい場合が生じます。
この点が、共有私道の一番の問題点ということになります。

共有私道の2つの類型

先に述べた事例研究会は、「私道」について、「①私道全体を複数の者が所有し、民法第 249 条以下の共有(共同所有)の規定が適用されるものと、②私道が複数の筆から成っており、隣接宅地の所有者等が、私道の各筆をそれぞれ所有し、相互に利用させ合うもの」の2つに区分しています。

共有物における管理の原則

民法では、共有物の管理は次のように分類されています。

(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

保存

保存行為とは、法律学小辞典(株式会社有斐閣刊・以下同じ)によれば、「財産の価値を現状において維持するための行為」とされています。

管理

管理行為とは、法律学小辞典によれば、「保存行為及び財産の性質を変えない範囲での利用または改良を目的とする行為」とされています。

変更

変更とは、「処分行為」とも言い、法律学小辞典によれば、「単なる保管の域を超えて財産の性質や現状を変更する行為」とされています。

これまでの問題点

民法の原則

上記の通り、民法上は、保存行為は共有者が単独で、管理行為は持分の過半数でできるものの、変更(処分)行為は全員の同意が必要とされています。
しかし、共有の場合には複数の所有者がいることになりますので、所有者ごとの意向の違いや所有者不明等の理由により、変更(処分)行為が必要であるにも関わらず、同意が得られないために、変更(処分)行為ができない、という場面が生じます。

改正民法における変更点とガイドライン

上記のような弊害があったことなどから、令和3年の民法改正(令和5年4月1日施行)により、
〇共有制度の見直し
・共有物の管理の範囲の拡大・明確化
・賛否不明共有者以外の共有者による管理の仕組み
・所在等不明共有者以外の共有者による変更・管理の仕組みなど
〇財産管理制度の見直し
〇相隣関係規定の見直し
などが導入されることになりました。

そして、令和4年6月7日付で改定されたガイドラインでは、「改正民法の解釈を明確化し、具体的なケースにおける法の適用関係を示す」とされ、私道の管理に際して問題となりうる37事例についての対処法を説明しています。
この改正とガイドラインにより、共有私道の管理不全が解消されることが期待されます。

共有私道における問題点

それでは、共有私道の管理において、どのような場面・事例が具体的に問題となるのでしょうか。
ガイドラインの記載を見てみます。
※なお、以下の記載はあくまでガイドラインによる例示であって、下記のすべての場合が記載の通りであることを保証するものではありません。この点、ご了承ください。

補修

舗装が劣化した箇所の舗装など、小規模な補修は、これまでも単独行為という解釈が定着していたと考えられます。
実際、ガイドラインの事例1でも、舗装が必要な箇所を小規模の修繕することについて、保存行為であり単独で可能としています。
(もちろん、大規模な修繕や性質を変えるような工事の場合は、管理又は変更に当たると考えられます)

公共下水管の新設

共有私道に公共下水管を新設する場合についてガイドライン事例23は、共有物の管理に関する事項に当たり、共有者の持分の過半数で決するとしています。

舗装の新設

砂利道であった共有私道をアスファルト舗装する場合についてガイドライン事例5は、「軽微変更」という、変更の中でも、持分の過半数で決定することができる新しい行為に該当するとしています。

樹木の伐採

共有私道上にある樹木の伐採についてガイドライン事例34は、「軽微変更」という、変更の中でも、持分の過半数で決定することができる新しい行為に該当するとしています。

ガイドライン

ガイドラインは、下記のURLから参照できます。
https://www.moj.go.jp/content/001374239.pdf
https://www.moj.go.jp/content/001374238.pdf

共有私道とグリーンリーフ法律事務所

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の特徴

開設以来数多くの不動産に関する案件・相談に対応してきた弁護士法人グリーンリーフ法律事務所には、不動産に精通した弁護士が数多く在籍し、また、不動産専門チームも設置しています。
宅地建物取引士向けの法定講習講師を担当している他、マンション管理士、マンション管理業務主任者、宅地建物取引主任者試験(現・宅地建物取引士)に合格した弁護士も在籍しています。
埼玉県内の不動産業者の皆様を会員とする「アネットクラブ」も主宰しています。

アネットクラブとは

アネットクラブとは、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所が主催する、埼玉県内の宅地建物取引業者の皆様を会員とするクラブです。
アネットクラブの会員からの法律相談をお受けしている他、アネットクラブ会員様のお客様の来所法律相談も初回無料としています。

最後に

不動産業者の皆様は、ぜひ、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所のアネットクラブへのご加入や顧問契約の締結をご検討ください。
不動産案件・相談に精通した弁護士が回答いたします。

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グリーンリーフ法律事務所は、地元埼玉で30年以上の実績があり、各分野について専門チームを設けています。ご依頼を受けた場合、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 野田 泰彦
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