このページでは、埼玉県で30年以上、不動産事件を扱ってきた法律事務所の弁護士が、「賃料減額請求」に関する民法・借地借家法の解説とサブリース契約との関係について、所有者(地主)の目線から解説し、有益な情報を提供しております。

はじめに

このページでは、埼玉県で30年以上、不動産事件を扱ってきた法律事務所の弁護士が、「賃料減額請求」に関する民法・借地借家法の解説とサブリース契約との関係について、所有者(地主)の目線から解説し、有益な情報を提供しております。

賃料減額請求とは

賃料減額請求とは、文字どおり、賃料の減額を求める/求められることをいいます。こちらをご覧のオーナー様=貸主の立場に置き換えますと、借主から、賃料の減額を求められることをいいます。
しかし、賃料は賃貸借契約書やサブリース契約書などで取り決めているはずです。それなのに賃料減額を求められるのはどのような根拠があるのでしょうか。
実は、賃貸関係を規律する民法や借地借家法において、以下のような定めがあります。

民法

(旧民法)611条1項

令和2年4月1日以前の旧民法は、「賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。」と定めておりました。
ポイントは、「滅失」があること、「請求することができる」と請求を必要としていたことです。もっとも、裁判例において、「滅失」以外にも減額を認めていたことは事実としてあります。

(新民法)611条1項

令和2年4月1日に施行された新民法は、「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。」と定めております。
ポイントは、旧法とは異なり、「滅失」のみならず「その他の事由」でもよいということ、「減額される」と請求を必要とせず当然に減額されることとなっている点です。

借地借家法

民法の特別法、つまり民法の規定に優先される法律として、借地借家法があります。
借地借家法には、32条1項本文「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。」という定めがあります。

したがって、オーナー様(大家)は、常に、借主から、賃料減額を求められるリスクを抱えているといえます。

賃料増額を求めることができる場合もある

ただし、よく上記借地借家法の条文をみていただきたいのですが、賃料「増減」に関する規定です。つまり、オーナー様は、地価の上昇などにより、「租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったとき」は、借主に賃料増額を求めることもできるのです。

賃料の決め方は

では、賃料増額、減額の請求がある場合に、どのようにして賃料を決めるのでしょうか。賃料に関する争いは、交渉で決まればよいですが、そうでなければ、調停を前置し、調停(=話し合い)で折合いをつけます。それでも折り合わなければ、裁判で取り決めることになります。

裁判では、訴訟の中で提出される不動産鑑定士による鑑定評価書に基づいて決定される場合が多いといえます。鑑定については、不動産鑑定評価基準によれば、継続賃料の鑑定評価基準として、「現行賃料を前提として、契約当事者間で現行賃料を合意しそれを適用した時点(以下「直近合意時点」という。)以降において、公租公課、土地及び建物価格、近隣地域もしくは同一需給圏内の類似地域等における賃料又は同一需給圏内の代替競争不動産の賃料の変動等のほか、賃貸借等の経緯の経緯、賃料改定の経緯及び契約内容を総合的に勘案し、契約当事者間の公平に留意して決定する」とされております。具体的な評価手法には、差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法などが定められておりますが、ここでは割愛します。

サブリース契約(一括借上げ契約)との関係

サブリース契約の意味については、こちらの記事をご参照ください。
ここでは、サブリース契約に、上述したような借地借家法の適用があるか、という疑問についてお答えします。
結論としては、サブリース契約についても、借地借家法の適用があるというのが最高裁判所の立場であり、賃料減額請求の対象となると考えられます。

つまり、借地借家法上、サブリース契約におけるオーナー(大家)は「貸主」となり、サブリース業者は「借主」となります。したがって、多くのサブリース会社はプロの業者ではありますが、借地借家法32条に基づき、オーナー様に対し、賃料減額請求をすることができるという結論になります。

賃料減額請求に対してオーナーが取るべき対応

前述のとおり、裁判になった場合には、「現行賃料を前提として、契約当事者間で現行賃料を合意しそれを適用した時点(以下「直近合意時点」という。)」を基準にその後の「公租公課、土地及び建物価格、近隣地域もしくは同一需給圏内の類似地域等における賃料又は同一需給圏内の代替競争不動産の賃料の変動等のほか、賃貸借等の経緯の経緯、賃料改定の経緯及び契約内容を総合的に勘案」して決めることになります。

そのため、この「直近合意時点」が好景気か不景気かによって判断が異なります。単純に、直近合意時点が好景気で、現在が不景気であれば、賃料が減額される可能性が高いので、交渉段階から微小な減額には応じてしまった方がよい(弁護士費用その他鑑定費用等の費用負担も少なくて済む)と思われます。
一方、直近合意時点が不景気で、現在が好景気であれば(近年はコロナ禍で必ずしも想定できないかもしれませんが)、賃料が増額される可能性もありますので、強気な交渉として「減額はとんでもない。むしろ増額を求めたいくらいである。」という態度を出ることも考えられるでしょう。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志
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