紛争の内容
地主のAさんは、25年前、B氏に対して、居住用建物の所有を目的として土地を賃貸し、B氏はその土地上に自宅を建築して家族とともに居住してきました。
ところが、B氏は、この10年ほど、毎月の地代の支払いが滞りがちとなり、Aさんから督促を重ねてようやく遅れての入金があるような状態でしたが、遂に支払いが途絶え、3年分以上を滞納するに至りました。
Aさんは、何か事情があるのかと最初は静観していたものの、B氏からは何の説明もなく時間ばかりが過ぎていくため、お困りになり、当事務所に借地契約の解除と土地の明け渡しをご依頼になりました。
交渉・調停・訴訟等の経過
弁護士からB氏に対し、滞納地代を支払うよう催告する旨の内容証明郵便を送ったものの、B氏からは期限内に支払いがなされることはなく、借地契約は解除されました。
その後も、B氏が土地を明け渡す様子が見られなかったため、裁判所に建物収去土地明渡請求訴訟を提起しました。
裁判に出頭してきたB氏は、そこで初めて滞納に至った事情を述べ、「生活環境が大きく変わってしまうので明渡しは免除して欲しい。代わりに別の親族との間で借地契約を結んで欲しい」との希望が出されましたが、もはやそのような希望を勘案する段階ではないため、お断りしました。
建物を収去して土地を明け渡すよう命じる判決が言い渡され、こちらは強制執行に向けて建物収去命令を取得しました。
しかし、その段階に至って、B氏から、「2か月後までに建物をこちらで解体して土地を明け渡すので、強制執行の申立てを待って欲しい」との申し入れがありました。また、土地に設定されていた借地権の登記もきちんと抹消すると約束したため、Aさんと相談のうえ、いったんは、B氏による任意の解体・土地明け渡しを待つことにしました。
本事例の結末
B氏が約束した期限までに自ら建物を解体し、土地を明け渡したため、強制執行を経ることなく、Aさんは土地を取り戻すことができました。
(また、B氏によって借地権設定登記もきちんと抹消されました)
本事例に学ぶこと
B氏が約束を守らなかった場合でも、建物収去・土地明渡しの強制執行を行って同じ結果を実現することはできました。
しかし、その場合、B氏は借地権設定登記を放置したまま転居する可能性が高く、登記を抹消するために、Aさんは別訴を提起しなければならなかったかもしれません。
また、近年では建物の解体費用も高額化しているため、強制執行に進んだ場合、預かり保証金では相殺し切れない負担がAさんに発生することも予測されました。
本件では、最後の最後に借地人であるB氏が誠意を見せてくれたため、地主であるAさんがこれらの負担を負うことなく、借地権設定登記の抹消された土地を返還してもらうことができ、理想的な終わり方をした事案と言えます。
弁護士 田中 智美

