紛争の内容
オーナーのAさんは、賃借人B氏に対してアパートの1室を月額7万円で賃貸し、B氏も契約当初はきちんと賃料を支払っていました。
しかし、数年後からB氏は突然賃料を支払わなくなり、Aさんが事情を聞こうと部屋に訪ねていっても会うことができず、電話もつながらず、請求書をドアに挟んでも無視される状態となりました。
Aさんは、このアパートの他にも多数の賃貸物件を所有しており、収入に困っていなかったこともあって、B氏に対する請求も何となく億劫となり、そのまま10年以上が経過してしまいました。
ある時、状況を知った家族から促され、Aさんはこの問題をこれ以上放置してはいけないと一念発起。
当事務所にご相談いただき、物件の明渡しを求めて訴訟を起こすこととなりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
消滅時効にかかっている賃料も多かったのですが、それらを除外してもなお、かなりの金額が未払いの状態であり、信頼関係の破壊は明らかでした。
まずは、未払賃料の支払いを求めるとともに期限内に支払いがない時は賃貸借契約を解除する旨の内容証明郵便を発送。
期限内に支払いがなかったため、賃貸借契約解除の効果が発生しました。
その後、速やかに、地方裁判所に建物明渡請求訴訟を提起。
勝訴判決が出てもなお、B氏はアパートに居座り続けたため、続けて、強制執行を申し立てることになりました。

本事例の結末
強制執行手続きを経て、室内の残置物を全て撤去し、物件の明渡しを実現しました。

本事例に学ぶこと
本件は稀に見る長期滞納事案でしたが、さらに、室内の状態がひどく(大量のゴミの堆積)、強制執行には多額の費用がかかりました。B氏にとっては、長年賃料も支払わずに無料で住めて、オーナーからもうるさく言われないという状況でしたから、今回、Aさんが法的手続きを決断しなければ、いつまでもズルズルとこの状態が続いてしまっていたと思います。
賃貸物件のオーナーは、滞納が解消できそうにないと思ったら、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士 田中 智美