紛争の内容
アパートの一室を単身者に貸したところ、家賃の入金があったのは最初の2か月のみで、以降はまったく家賃が振り込まれなくなってしまった。
管理会社が確認に行くと、部屋には、契約者の兄がいたり、妹がいたり、友人がいたりと一定せず、それらの人物宛ての郵便物も届いていることが分かった。
賃貸人から相談を受け、明け渡し訴訟を受任した。

交渉・調停・訴訟などの経過
物件に契約者以外の人物が複数出入しており、今後も入れ替わる可能性が認められたので、相手方を固定するため、占有の認められる契約者本人、兄、妹、及び友人1名に対し、仮処分(占有移転禁止)を申し立て、保全執行を行った。これにより、今後、訴訟を起こして判決を得るまでの間に物件を出入りする人物が変わっても、契約者などに対して言い渡された判決で明け渡しの強制執行ができるようにした。
その後、速やかに、賃料不払いによる契約解除を理由として、契約者本人、兄、妹、及び友人1名に対し明け渡し請求訴訟を提起した。

本事例の結末
訴訟提起後、契約者本人と連絡が取れ、弁護士が説得した結果、全員が部屋を引き払うことを約束し、任意の明け渡しを受けることができた(訴訟は取り下げて終了)。

本事例に学ぶこと
本件のように、契約者以外の人物が複数出入りし、今後も占有が入れ替わる可能性のある場合には、訴訟を提起する前に占有移転禁止の仮処分を行って、明け渡しを求める相手を固定化しておくことが重要である。