紛争の内容
駐車場を貸している大家さんからのご相談でした。該当車両は二台あり,いずれも車両の劣化が進み,見栄えが悪いということで撤去を希望されておられました。
賃借人は借りてすぐに賃料支払いが遅れるようになり,年単位で賃料の入金が無い状態とのことでした。大家さんは,可能な限り早く出て行ってほしいというご希望でした。

交渉・調停・訴訟などの経過
賃借人に対して,滞納賃料全額を支払うよう請求し(「催告」と言います),催告した期間内に支払が無い場合には,賃貸借契約を解除する旨の連絡を内容証明郵便で行いました。
しかし,一切の賃料が支払われませんでしたので,土地明渡しを求める訴訟を提起しました。

本事例の結末
賃借人のうち,1名は訴状の送達ができませんでしたので,現地(住民票の最終住所地)を調査した上で,公示送達という手続を踏みました。これにより,訴訟は,1回目の期日に終結し,2回目の期日には,全面的に大家さんの主張が認められた内容の判決が言い渡されました(訴訟提起から概ね3か月程度かかりました)。なお,公示送達とは,被告の居場所が分からずに訴状を送達できない場合に,裁判所の掲示板に訴訟が提起されたことを掲示して一定期間が過ぎることにより,訴状が被告に届いたものとみなす制度です。
その後,明渡しを認める判決に基づき,強制執行を申立て,二回の立会(一回目は催告期日といい,二回目は断行期日といいます。)を経て,無事に駐車場からの撤去が完了しました。
賃借人のうち,もう1名は訴訟を提起した後,任意に撤去をしていただきましたので,裁判所では未払賃料の支払に関する話合いがなされました。そして,分割払いするという約束を受けた方が,回収可能性は高まると判断し,大家さんと協議の上,二回目の期日に和解が成立しました(なお,分割払いを認める場合,仮に支払いを怠った場合に期限の利益を失い一括で支払わなければならない旨の条項(懈怠条項といいます)を付けるのが通常です。財産のない人からお金をとることはできませんので,滞納賃料を少しずつでも任意に支払ってもらえるのであれば,一括払いを命じる判決を得るよりも,和解により柔軟に定める方が回収可能性は高まります)。

本事例に学ぶこと
賃貸借契約は継続的な賃料収入が得られる反面,入居者が支払わない場合には,自動車を適法に撤去するとか,賃借人に出ていってもらうためには,契約を解除する必要があります。また,賃借人が任意に対応しない場合には,大家さんから明渡しを求める訴訟を提起して,勝訴判決を獲得した上で,強制執行の手続を踏まなければなりません。このような手続には,弁護士が受任してからも一定以上の時間がかかりますので,その間に賃料が回収できない一方,他に貸して収益を上げることもできず,損をしてしまうことになります。明渡しを求める場合には,お早目に弁護士にご相談いただいて損はありません。