紛争の内容
さいたま市内にあるアパートを賃貸経営しているAさんは、そのうちの1室を借りているBさんが1年以上にもわたって賃料を払っていないことに悩んでいました。利便性も高いアパートでしたので、Bさんが退去してくれれば新たな賃借人はすぐにつくような物件です。管理会社を通じて、通知を出してはみたものの、Bさんは応じもせず、賃料を払ってくれる様子もありません。そこで、仕方なく解除を前提に、Bさんにアパートの明け渡しを求めることにしました。

交渉・調停・訴訟などの経過
Aさんの代理人として弁護士が就任してから、直ちに解除予告通知を出し、支払期限を通知しましたが、やはりBさんは支払いもせず、対応する様子もありませんので、やむなく訴訟を提起しました。Bさんは訴訟の期日には来たものの、未納賃料を支払う余裕はないとのことで、直ちに判決をもらうことにしました。判決をされてからも、Bさんは支払うそぶりもアパートを退去するそぶりも見せませんでしたので、さらに建物明渡の強制執行を申し立てることにしました。催告期日という執行官が明渡期限を言い渡す手続を経たところ、とうとう観念したBさんは、明渡の断行期日の前に、自主退去をしていきました。

本事例の結末
結果として、強制執行の申立と明け渡しの催告まではすることとなりましたが、Bさんは自主退去してくれたため、執行補助者という荷物の運び出し業者にも、あまり費用を払わずに済みました。

本事例に学ぶこと
賃料未納になる賃借人は、大抵の場合もはや賃料を支払う余裕がありません。自主的な退去を交渉で勝ち取ることは難しいですが、裁判所の判決や強制執行を経ることで、明け渡しを強制的に実現できることはもちろんのこと、任意の退去をしてもらえることもあります。賃借人の未納や退去が自然となされる可能性は非常に低いので、滞納が発生したら速やかに弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士 相川一ゑ