紛争の内容
マンションの一室を借りた賃借人から、入金が途絶え、3か月以上の滞納となり、また、貸室において起居している様子がうかがわれなくなった賃借人に対し、明渡を求めた事案。

交渉・調停・訴訟などの経過
マンションの管理を任された不動産会社の担当者が、賃貸人オーナーを伴い、法律相談を受けられました。
手続の概略、スケジュール見込み、弁護士費用など手続き費用の説明をして、正式にご依頼いただきました。
入居者宛に、滞納賃料の支払い催告の書面を内容証明郵便(配達証明付)と、本件貸室に起居していないようだとのことでしたので、郵便ポストへの投函確認のできる特定記録郵便にて発しました。
また、送達場所調査のために、住民票請求をしました。住民票は、本件建物所在地のままでした。
やはり、内容証明郵便は保管期間経過で戻りました。
すぐに、訴訟を提起し、被告宛に訴状の副本などの送達をしてもらいましたが、やはり、保管期間経過で裁判所に返送され、裁判所より、居住確認などの送達場所調査を命じられました。
夕刻以降の時間に、当該マンションを訪れましたが、同貸室の明かりはともりませんでした。ドアをノックし、インターホンを押しても、応答がありませんでした。
翌朝は、小雪の舞う寒い時期でしたが、ベランダ越しに見えるガラス戸解放されており、住んでいるようはありませんでした。また、管理会社から報告を受けていた、通勤用のバイクも見当たりませんでした。
上記の顛末を報告書にまとめ、さらに、管理会社が依頼した本件マンション建設会社の担当者に、高梯子をベランダにかけてもらい、内部を確認したところ、テレビ、ベッドなどはそのままで、その他の家財道具も片付けはされていないとの状況の報告なされ、これも併せて報告しました。
転居先、就業場所も不明であることも添え、公示送達の申立てを行いました。
公示送達により、本件訴訟が行われ、被告の欠席判決が言い渡されました。
同判決を債務名義として、明渡の強制執行を行い、断行により、依頼者に本件貸室の占有は回復されました。動産類は価値がないものとして、すべて廃棄処分となりました。
貸室内郵便物や集合郵便受けにあふれた郵便物から、貸金業者からの取り立ての通知が多数認められ、経済的に困窮していることがうかがえました。

本事例の結末
公示送達の手続きで粛々と行われ、強制執行により、明渡が実現されました。
賃借人債務者の状況では未払賃料は回収困難であることも容易に想定できました。

本事例に学ぶこと
賃借人が夜逃げした事案といえます。賃借人が長期不在のようであり、戻ってくるのか不明でした。
家財道具が残置されている以上、賃貸人オーナーが、それらを搬出し、鍵を交換してしてしまうことは、自力救済の禁止に触れますので、断じて行ってはなりません。
民事裁判は公示送達の申立てが不可欠となり、その調査報告も不可欠です。また、強制執行申立て、執行補助業者、解錠業者の手配も必要です。
このような事案こそ、弁護士に依頼し、粛々と手続をとることが、結果として、賃貸人の方の収益確保、損失の拡大防止につながるものといえます。
当事務所にご相談、ご用命ください。賃料不払いによる賃貸借の解除が確実な事案は弁護士費用も低額で対応可能となっております。

弁護士 榎本誉