紛争の内容
売買目的不動産(更地引渡条件の古家建物)内に、親族所有動産類が残置され、引き取りを求めても受け取らず、保管のため、トランクルームに預け、保管継続した。何度も引き取り催告するも引き取らないため、賃借トランクルームの明渡請求として、訴訟提起、強制執行した事件
交渉・調停・訴訟などの経過
1 訴訟提起。訴状送達奏功。
2 欠席判決。判決後、被告に対し、今後の手続きを説明、引き取り催告。応答なし。
3 強制執行催告執行、断行執行。催告期日後、断行期日指定の連絡と共に、債務者に引き取り催告。やはり、応答なし。
4 債権者保管による売却期日。債権者落札。廃棄処分。
本事例の結末
親族からは全く応答はない。できる限りの債務者対応をしたうえで、廃棄。
本事例に学ぶこと
1 法律構成として、①自宅内残置動産の貸コンテナ保管を、事務管理と構成。②管理継続義務の終了による、貸しコンテナの不法占有。③明渡請求権については、本コンテナは不動産登記法上の不動産に該当しない。借地借家法上の「借家建物」と不動産登記法上の「建物」要件は異なるとして、本件貸しコンテナも「借地借家法上の建物」に該当すると法律構成。貸しコンテナ事業者である貸主業者から貸しコンテナを借り受けることにより、借地借家法31条の対抗力を有すると構成。
対抗力ある建物賃借権に基づく妨害排除請求に基づく明渡請求と法律構成した。裁判官からも、被告より異議がなければ、これでよいとお墨付きを得た。
2 本件は遺産分割紛争から派生した件。遺産不動産取得後の売却処分について、決済・引き渡し期限から、残置動産を家屋明渡請求するには、時間的に余裕がない場合がある。数量・規模にもよるが、「残置動産の引き取りによる嫌がらせ」「引き取り拒否による非協力」者に対して、緊急避難的に、当該残置動産についての貸しコンテナ保管を事務管理構成し、その管理継続義務の終了から、貸しコンテナ費用の増大を回避し、責任を限定することが可能となる。
3 ただ、本明渡請求事件の弁護士費用は、本来的建物明渡の事件と変わらないが、貸しコンテナに収まる程度の残置動産であれば、執行補助者費用も比較的少額で済む。よって、建物取壊し予定の場合に、対応として有用なものとして利用が可能と考える。