①強制執行の流れ
強制執行の申立ては物件所在地の地方裁判所に対して行います。
依頼を受けた弁護士は準備の整った書類を添えて、地方裁判所執行官に対し、建物明渡の強制執行を申し立てます。
裁判所(執行裁判所)が申立を受け付けますと、手続き予納金の納付を指示し、それに従い予納金を納付します。
予納金を執行裁判所に納めますと、担当執行官から、強制執行手続きの日程調整の連絡があります。

②1回目の強制執行(催告執行)
担当執行官と担当弁護士は、1回目の強制執行の日時を調整します。
この強制執行を、明渡を命ずる判決に基づき、債務者である入居者賃借人に対して物件の明渡を催告し、明渡期限を決めることから、催告執行と呼ばれます。
催告執行を行う日時に、執行官、申立人債権者の代理人弁護士、執行手続きの立会証人が集い、債務者である入居者賃借人の居住する物件に臨場します。
執行官は、インターフォンを押すなどして入居者に来所を告げます。
入居者賃借人やその家族が在室すれば、解錠してもらい、当該物件内部に入室します。これは、判決などの債務名義の宛先である被告債務者が当該物件において事実占有しているかどうかを執行官が確認するためです(入居者が在室していない場合、公共料金の通知書等で占有の有無を確認するのが一般です)。
一方、その日に入居者賃借人もその家族も在室していない場合があります。そのような場合であっても、執行官は同行した解錠業者に当該物件のドアなどの施錠の解錠を指示し、解錠し、入室します(つまり、誰もいなくても、勝手に鍵を開けて入ってしまうということです)。このように、執行官には、法律上強力な権限が与えられています。

また、次の断行執行(明渡期限までに退去しない場合、明渡を強制的に実現する強制執行)に備え、催告執行当日には、執行官の主宰する執行を補助する業者(強制執行専門業者)の同行をお願いして、強制執行による、入居者の物品の搬出費用の見積もりをお願いするのが一般です。
入室して確認しなければ、当該居室内動産の搬出費用(必要人員、運搬トラック台数、梱包資材数等)が見込めません。
また、この執行補助業者は、民事紛争事件相手方の了解なくても、執行官の指示に従い、細心の注意をもって搬出作業にあたります。入居者が自ら依頼する引越し業者とは異なるため、引越し業者の費用より高額になるのはやむを得ないところです。

催告期日には、債務者である入居者賃借人に対して、任意退去を促すと共に明渡期限を指定します。
執行官はその旨の公示書を物件内に貼り付けます。

③2回目の強制執行(断行執行)
退去期限までに賃借人が任意に退去しない場合、2回目の強制執行、すなわち断行執行を行います。
これは、執行官の主宰のもと、本物件に入室し、物件内に残っている荷物(残置動産)を搬出し、倉庫に保管するというものです。
残置された動産が明らかに無価値物である場合には、その場で廃棄の判断がなされ、執行補助業者が廃棄処分します。

荷物を全て運び出した後、物件のドアの鍵を速やかに交換・施錠し、これにより、占有が債権者オーナー様に移転し、また、退去させた入居者が舞い戻れないようにします。
これにより、物件の明渡完了となります。

④売却期日
物件内に残っていた荷物で価値があると判断され、倉庫に保管された物については、保管場所において売却の手続き(売却期日)が行われます。
この期日までに債務者(入居者賃借人)も受け取らず、また、買受人が現れない場合、債権者自らが落札し、同じく廃棄処理します。

明渡の強制執行は、以上のような段階を経て完了となります。
弁護士にご依頼いただければ、上記全ての手続きを弁護士が代理いたしますので、オーナー様に現地に臨場していただく必要はござません。