継続的な契約である賃貸借契約を解除するためには、賃借人の債務不履行(=賃料滞納)が些細なものではなく、賃貸人との信頼関係を破壊したと言えるほどに重大なものであることが必要です。

 一般的には、3か月程度の賃料滞納があり、賃貸人から相当の期間を定めて支払うよう催告しても期限内に支払いがなかった、ということであれば、賃貸人・賃借人間の信頼関係は破壊されたと認定され、この要件が問題になることはほとんどありません。

 しかしながら、下記のようなケースでは、果たして信頼関係が破壊されたといえるのかが問題となり得ます。
 ・催告期間を5日として支払いを催告したところ、7日目に賃借人が滞納賃料全額を支払ってきた
 ・滞納賃料の合計30万円に対し、賃借人が期限内に28万円を支払った

 このようなケースで信頼関係が破壊されたといえ、契約解除ができるのかどうかの判断はまさに“ケースバイケース”です。
それまで一度も支払いが遅れたことのない誠実な賃借人であれば、たった2日の遅れやわずか2万円の不足で信頼関係が破壊されたとはいえなくなるでしょう。
これに対し、これが何十回目かの滞納で、滞納の度に賃借人は不合理な言い訳を繰り返しては賃貸人に回収の手間をかけさせてきたといった場合であれば、たった2日の遅れやわずか2万円の不足でもアウト、すなわち信頼関係は破壊されたといえるでしょう。
このように、これまでの契約関係の中で生じた様々の事情を総合的に考慮したうえで、今回の賃料不払いが、契約解除もやむなしといえるほど信頼関係を破壊したといえるかどうかを決定していくことになります。