駐車場の明渡し、賃貸人や地主はどう対応すればいい?駐車場の賃借人が駐車場代の支払いを滞ってしまった場合や、所有者不明の放置車両を自分の土地におかれてしまった場合、土地の所有者はどうしたらよいのでしょうか。今回は、そのような困った車の明渡し対応について、弁護士の立場から解説していきます。

駐車場代の未納や、権限なく車両を放置されてしまった場合の対応

駐車場の未納・違法駐車について

駐車場として貸している土地でも、そうでない土地でも、ちょっとした土地を自動車が置かれるスペースとして利用することは多いのではないでしょうか。
駐車場の賃借人が、駐車場代を払って利用しているのであれば良いのですが、駐車場代の支払いが滞ってしまった場合や、所有者不明の放置車両が自分の土地に置かれてしまった場合はどうしたらよいのでしょうか。

自力救済の禁止

自分の権利が、何者かによって侵害されている場合、法律上の手続によらず、自力でその権利侵害状態(駐車場代の滞納状態や車両の放置)を解消しようとすることを、「自力救済」と呼びます。

日本では、「自力救済」は、たとえ権利侵害を正に受けている状態であっても原則として禁止しており、判例によると「私力の行使は、原則として法の禁止するところであるが、法律に定める手続によったのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許される」(最判昭和40年12月7日)とされています。
「法律に定める手続によったのでは、権利に対する違法な侵害に対抗できない」という場合はほとんどありませんから、契約違反や第三者の違法行為があったとしても、権利の侵害を受けている側は、法律上の手続によって権利を回復すべきということになります。

ごく例外的に許されるものを除き、自力救済行為は、逆に民法上の不法行為(民法709条)に該当し、責任を問われかねないものです。例えば、駐車場の契約者が駐車場代を払わないとか、違法駐車があったからといって、勝手にその自動車をどかして廃車にしてしまったような場合は、損害賠償義務を課される場合があります。
また、行為の態様によっては、器物損壊などの刑事事件にまで発展してしまう可能性もあります。

法的手続による権利回復

これまでの記載のとおり、駐車場代の滞納や放置車両があるからといって、その不動産の持ち主として安易に違法な自力救済という選択はすべきではありません。
違法な自力救済を回避し、適法に未納駐車場代の回収を実現したり、土地からの車両撤去を実現し、問題なく事件を解決するためには、民事訴訟や強制執行といった法律に則った手続を実行する必要があります。

駐車場の明渡し請求、その内容と流れ

ケース1 駐車場契約は締結しているが、駐車場代が未納となっている場合

契約はあるものの、駐車場代が支払われないので、車をどかしてほしいという場合は、まずはその駐車場契約によって賃借人に使用権原があることになるので、以下の手続を踏む必要があります。

①未納駐車場代支払催告 兼 駐車場契約解除の予告通知

②土地明渡等請求訴訟

和解ないし判決

③強制執行

①駐車場契約の解除
駐車場を明渡してもらいたいということであれば、まず駐車場契約の解除をする必要があります。ただし、未納の駐車場代が非常に僅か、という場合、解除が認められないこともありえるでしょう。

解除をするには、賃料の未納があること及びその額を明記し、一定期間のうち(たとえば「本書受領後5日以内」、など指定します。)に支払わない場合には、駐車場契約を解除する旨の通知を賃借人に送ります。

相手方が上記郵便受領後も、指定期間経過後支払がないようでしたら、本件駐車場契約は解除されたということになり、賃借人は当該駐車場を占有する権原を失うことになります。

② 土地明渡等請求訴訟
賃借人との契約が解除されたからといって、無断で自動車を撤去することはできませんので、賃借人が任意に駐車場を明渡さないという場合には、賃貸人から解除賃貸借契約終了に基づく土地明渡等請求訴訟を提起します。

③ 強制執行
当該訴訟に勝訴した上で、この判決に基づいて強制執行という手続をし、執行官という裁判所の機関の手で、当該駐車場を賃貸人に明渡してもらうことになります。

ケース2 契約などの関係がない、違法な放置車両の場合

契約関係などを介さない放置車両の場合、まずはその自動車の撤去を誰に求めればいいのかということが問題になります。

事件を弁護士に依頼する場合には、「弁護士会照会」といって、弁護士の所属する弁護士会(埼玉であれば埼玉弁護士会)を通じて陸運局(普通乗用自動車の場合)や軽自動車検査協会(軽自動車の場合)などに照会をかけ、当該車両のナンバープレートなどの情報を基に所有者の特定を行います。

所有者の特定ができたら、その者に対し自動車の撤去を求め、それでも任意の撤去をしない場合は、ケース1の②からの流れと同様、訴訟を提起し、土地の明渡しを裁判官に認めてもらい、勝訴判決に基づいて強制執行を行います。

契約に基づく場合も、違法駐車の場合も、土地明け渡しそのものだけではなく、明渡済みまでの期間、「駐車場代」ないしは「駐車場代相当損害金」を請求する余地があります。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 相川 一ゑ
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