日常家事債務とは

民法には、夫婦の日常家事債務、という規定があります。

民法第七百六十一条
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

典型的なものは、日用品の購入です。
簡単に言えば、夫婦のどちらかが日用品を購入して代金を支払わなかった場合、夫婦の他方も、その支払い義務を負うということです。

家賃と日常家事債務

では、日常家事債務にいう「日常家事」の範囲はどこまででしょうか。家を借りている場合の家賃は含まれるでしょうか。

これに関しては、興味深い判決があります。
札幌地裁昭和32年9月18日判決です。
この判決は、「一般に夫婦が共同生活を営むために家屋やその一部を賃借する行為は、家屋の売買や抵当権の設定などの行為とは異り、夫婦共同生活の維持のための物質的基礎として日常の家事に緊密な関連を有する行為であるから民法第七百六十一条にいわゆる日常の家事に関する法律行為に属するものと解すべく、従つて家賃は勿論のこと、少くともその不履行の場合の遅延損害金については夫婦は連帯してその支払義務を負うと解するのが相当である。」と述べて、家賃と遅延損害金を日常家事債務であることを認め、契約をしている配偶者ではないほうの配偶者にも、滞納賃料の支払いを認めました。
ただし、契約終了後の賃料相当損害金については、「賃貸借契約終了後の不法占有に基ずく損害金の請求について案ずるに、前説示の如く、通常の家屋賃貸借契約を日常の家事とみる以上、広く解すれば右損害金も一応家屋賃貸借契約に関連するものと考えられるが、然しながらそれは賃貸借契約によつて生じたものではなく、全く異る不法行為という別個の事実より発生したものであるから直ちに右の損害金支払義務を民法第七百六十一条の日常の家事による債務の内に包含させる訳には行かない。むしろ同法条は、連帯債務の発生に関する特則としてその範囲の認定に際しては慎重な考慮を要するものというべく、従つてたとえ日常の家事に関連して生じた債務であつてもそれが不法行為によつて生じたものである以上一般の不法行為制度によつて妥当な解決をはかるべきものとし、不法行為による債務はこれを除外する趣旨と解するのが相当であるから、原告の民法第七百六十一条を理由とする損害金の請求は失当といわなければならない。」と述べて、日常家事債務に該当しないと判断しました。

なお、当事務所の経験上は、契約終了後(家賃滞納の場合は解除後)に、契約をしている配偶者ではないほうの配偶者に賃料相当損害金を請求する場合には、共同不法行為構成をとることで、認められる裁判例が多いように思います。

家賃滞納とグリーンリーフ法律事務所

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の特徴

開設以来数多くの不動産に関する案件・相談に対応してきた弁護士法人グリーンリーフ法律事務所には、不動産に精通した弁護士が数多く在籍し、また、不動産専門チームも設置しています。
宅地建物取引士向けの法定講習講師を担当している他、宅地建物取引主任者試験(当時)に合格した弁護士も在席しています。
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最後に

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 野田 泰彦
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