紛争の内容
オーナーのAさんは、株式会社Bに対し、戸建て建物(2階建て)を事務所として賃料月額15万円で貸していたが、1年ほど経過した後、賃料の入金が突然途絶えてしまった。
現地を確認すると、会社の看板も荷物もそのままでだが営業している様子は見られず、2~3か月ほど静観してみたが状況は変わらなかった。その後、会社の専務と名乗る人物からAさんのもとに連絡があり、「社長は夜逃げした。申し訳ないが、自分の一存では残った荷物の撤去はできない」とのことであった。

交渉・調停・訴訟などの経過
Aさんの依頼を受け、賃料不払いによる契約解除を理由に物件の明渡しを求める訴訟を提起した。
会社(=賃借人)は破産等の法的措置を取らないまま事実上の営業廃止、社長(=連帯保証人)は夜逃げしてどこにいるか分からないという状況だったので、両名(会社と社長個人)の所在調査を行ったうえ、公示送達の方法で送達を行った。
誰も出頭しないまま、事務所の明渡しを命じる判決が言い渡された。

本事例の結末
判決に基づき明け渡しの強制執行をおこなって、残された看板や荷物を全て撤去し、貸していた事務所の返還を受けることができた。

本事例に学ぶこと
物件の状況(看板や荷物はそのままなのに営業している様子がない、長らく従業員らの出入もない)から明らかに夜逃げだろうと判断されるケースであっても、法的手続き(明渡訴訟の提起→判決に基づく明渡しの強制執行)を踏まず、オーナーの側で勝手に残置物等を撤去・処分してしまうと、後々、賃借人から損害賠償請求を受けるなどのトラブルになる可能性もある。
特に、本件では、残置物の中にまだ新しいデスクや応接セット、業務用の特殊機械など価値のあるものも含まれていたため、より慎重に進めるべき事案であり、執行費用はかかっても後から文句を言われることのない適正手続きを踏むことが肝要である。

弁護士 田中 智美