紛争の内容
依頼者が賃貸している集合住宅の一室の賃借人が、過去何年にもわたり賃料の支払を滞納し、賃借人が滞納家賃を支払わないため、賃借人に対し建物明渡請求の裁判をして、賃借人に建物から出て行ってもらうよう、強制執行の申立てまでして欲しいとご依頼されました。

交渉・調停・訴訟などの経過
依頼者から、賃借人の家賃滞納状況資料(入金状況がわかる通帳一式)を提出していただき、弁護士が内容を調べたところ、賃借人は、過去数年にわたって、ときどき支払わないときがあり、賃貸人である依頼者がそのままにしてしまっていた事実が判明しました(督促しないばかりか、遅れ遅れの支払いを是認してきたような経緯がありました)。最近数ヶ月にわたって、まったく家賃が支払われていないケースとは異なり、このまま建物明渡請求の訴訟を行っても、請求が認められないリスクがあると判断しました。
そこで、弁護士から、賃借人に対し、未払賃料の合計額を支払うよう、何度も何度も催促しましたが、数ヶ月経っても、賃借人から何も連絡が来ることはありませんでした。
そこで、弁護士から、賃借人に対し、最後通告として、未払賃料を支払わないならば、賃貸借契約を解除し、建物から出て行ってもらう裁判を提起する旨の通知書を送りました。すると、やっと賃借人は、弁護士に連絡をするに至りました。
もっとも、ふくれあがった未払家賃を一括で支払うことはできないため、毎月の賃料に加えて、分割での支払を認めてくれないかとの打診を受けました。

本事例の結末
依頼者と相談したところ、賃借人の分割払の打診を受け入れるとのことであったため、賃借人と合意書を交わすことになりました。合意書内には、毎月の分割での未払賃料支払が遅れた場合には、建物を出て行く内容の条項も盛り込みました。さらに、弁護士から、賃借人本人に電話し、約束を守らないと、今度こそ訴訟提起し、建物を出て行ってもらうことになるので、絶対に約束を守るように、強く指示しました。

本事例に学ぶこと
賃料の未払があるといっても、その内容は様々です。未払の詳細な内容を弁護士にお知らせいただき、内容によってどう対処することが可能であるのか、どう対処していきたいか、相談することが必要になります。
その判断にあたっては、専門家である弁護士のアドバイスが必要な場面が出てきます。お困りの際には、ぜひ一度、弁護士に相談されることを強くおすすめします。

弁護士田中智美
弁護士平栗丈嗣