貸主は、1階をテナント、2階をアパートとして4部屋、3階を居住用とする3階建て本件建物を所有し、1階テナント部分を借主である不動産会社に賃貸していました。しかしながら、3階に同居していた高齢の父の介護のため1階部分を居住用部分に改装したいということで、借主に対し、期間満了による建物賃貸借契約の終了を主張し、借主を争いになりました。

貸主は、3階建ての本件建物にエレベーター等がなく、デイ・サービス等を受けるため、また、父の介護を主に担当する母がやはり高齢であるため3階に行き来するのは困難であるから、本件建物の1階部分について自己使用の必要性が高いと主張しました。

これに対し、借主は、2階にアパート部分があること、貸主の父名義の物件が他にあること(ただし、父の子である貸主の兄弟が既に居住していました。)、借主側で代替物件の確保ができておらず立退することが困難であると主張しました。

当初、貸主は、1階部分の自己使用の必要性が高い以上、立退料については支払をしない、もし支払いをするとしても移転実費程度と主張していましたが、裁判所は、借主が単に居住用として使用しているのではなく、来店客もある不動産会社の事務所として使用していること(借主の自己使用の必要性も認定)、代替物件の確保ができておらず、立退をすれば事業の停止(閉鎖)となる可能性もあること、貸主の自己使用の必要性も認められるが別物件の存在等もあることから、移転実費だけでなく営業補償費などの損害賠償金も考慮すべきであるとして、双方に和解を進め、結局、立退料を450万円とし、かつ、相当の明渡猶予期間を設定した上での和解が成立しました。

期間満了による建物賃貸借契約の終了が争われる場合、正当事由の有無が争点となりますが、貸主の自己使用の必要性と借主の自己使用の必要性が双方に認められる場合は、立退料は高額化する傾向にあるようです。