質問

消費者契約法が、アパートの賃貸借契約に及ぼす影響について教えてください。

回答

消費者契約法は、事業者と消費者との取引について適用があります。アパートを経営している貸主は「事業者」になりますから、「消費者」である借主との間の賃貸借契約は、消費者契約法の規制対象になります。

1 消費者契約法では、事業者と消費者との契約について、次の事由があれば、消費者は契約を取り消すことができます。
① 事業者の次の各行為によって消費者が誤認した場合
A 重要事項について事実と異なることを告げた。
B 将来における変動が不確実な事項について、断定的判断をした。
C 重要事項について、消費者の不利益となる事実を故意に告げなかった。
(アパート経営における具体例)
 貸主(事業者)に次のような行為があると、借主(消費者)から賃貸借契約を取り消される可能性があります。
 借主が不動産業者に仲介を依頼した場合、仲介に入った不動産業者が次の行為を行った場合でも同様ですから、注意が必要です。

■ ペット禁止のアパートなのに、飼ってもよいと言った(A)。
■ 事務所として使えないのに、事務所として使ってもよいと言った(A)。
■ クーラーが付いていないのに、付いていると言った(A)。
■ 1年後に間違いなくスーパーマーケットができると言った(B)。
■ 居住環境が良いと説明したのに、実際には別の居室に暴力団が住んでおり、そのことを故意に告げなかった(C)。
■ 居住環境が良いと説明したが、実際には近くのラーメン屋からの悪臭がひどく、そのことを故意に告げなかった(C)。

② 事業者の次の各行為によって消費者が困惑した場合
D 消費者の住居または消費者が業務を行っている場所から退去しない。
E 事業者が勧誘している場所から消費者を退去させない。
(アパート経営における具体例)
 貸主(事業者)あるいは仲介業者に次のような行為があると、貸主(消費者)から賃貸借契約を取り消される可能性があります。
■ 仲介業者の営業マンが、帰ろうとしている者を引きとめ、強引に勧めて賃貸借契約を締結した(E)。

2 事業者と消費者の間で締結される契約中の、契約解除の場合の消費者の責任が、相手方事業者に生ずべき平均損害額を超える条項、金銭債務の不履行について、消費者が年利14.6%を超える負担をする条項などについては、その条項は無効になります。

(アパート経営における具体例)
 次のような条項は無効になる可能性があります。
■ 賃貸借契約が解除されたのに、借主が明渡しを遅滞している場合、賃料の3倍の遅延損害金を支払わなければならないとする条項。
■ 賃料の支払を遅滞した場合、借主は年20%の遅延損害金の支払をしなければならないとする条項。