不動産は高額な買い物であるがゆえに、瑕疵があった場合には大きな問題になります。
瑕疵があった場合の責任追及は、現在では民法の「契約不適合責任」という条文で規定されています。今回は、この「契約不適合責任」の「免責特約」について、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所が解説いたします。

契約不適合責任とは

瑕疵担保責任から契約不適合責任へ

これまでは、売買の目的物に隠れた「瑕疵」≒「欠陥」がある場合に、売主は買主に対して、担保責任を負うとされていました。これを「瑕疵担保責任」と言います。
瑕疵担保責任では、買主が隠れた瑕疵の存在を知らなければ売主に対して、損害賠償を請求でき、また、契約の目的を達成できなければ契約を解除できるとされていました。
しかし、例えば損害賠償まではしないけれども代金を減額してもらえればよい、あるいは、補修などをしてもらえればよい、という場合もあると思います。
しかし、従前の「瑕疵担保責任」では、こうした代金減額や補修などの請求はできないとされてきていました。(実社会では柔軟に対応している場合もあったと思いますが。)

契約不適合責任

こうした事情などもあり、2020年の法改正で、「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」に改められました。
これにより、買主は、
①追完請求(修補、代替物の引渡し、不足分の引渡し) 民法562条
②代金減額請求 民法563条
③損害賠償   民法564条
④解除     民法564条
が可能になりました。

(買主の追完請求権)
第五百六十二条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。
(買主の代金減額請求権)
第五百六十三条 前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一 履行の追完が不能であるとき。
二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3 第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。
(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
第五百六十四条 前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。

契約不適合責任の免責特約

以上のような契約不適合責任は、買主の立場に立った場合には非常に有用な規定ですが、売主の立場に立った場合には、責任を追及される可能性があることになり、場合によっては売買を阻害することになりかねません。
そして、契約不適合責任は、任意規定と言って、契約に組み込むかを強制されない規定となっています。
従って、契約不適合責任を免責したり、軽くしたりする特約を合意することは可能となっています。

契約不適合責任の免責特約の有効性

以上のように契約不適合責任を免責したり、軽くしたりする特約を合意することは可能となっていますが、どのような場合でも有効であるというわけではありません。
次のような場合などには、契約不適合責任の免責特約が有効でないとされています。
①消費者契約法の適用がある場合(消費者契約法)
②契約不適合を知っていながら告げなかった場合(民法572条)
③売主が宅建業者で、買主が宅建業者でない場合(宅建業法)
これらは、情報格差や交渉の立場の強弱を考慮して、契約不適合責任の免責特約(場合によっては一部)を認めないこととしています。

契約不適合責任の免責特約とグリーンリーフ法律事務所

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の特徴

開設以来数多くの不動産に関する案件・相談に対応してきた弁護士法人グリーンリーフ法律事務所には、不動産に精通した弁護士が数多く在籍し、また、不動産専門チームも設置しています。
宅地建物取引士向けの法定講習講師を担当している他、宅地建物取引主任者試験(当時)に合格した弁護士も在席しています。
埼玉県内の宅地建物取引業者の皆様を会員とする「アネットクラブ」も主宰しています。
顧問会社様やアネットクラブの会員様からは、契約不適合責任それ自体や、契約不適合責任に対する免責特約、その他契約一般について多数の相談を受けています。

アネットクラブとは

アネットクラブとは、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所が主催する、埼玉県内の宅地建物取引業者の皆様を会員とするクラブです。
アネットクラブの会員からの法律相談をお受けしている他、アネットクラブ会員様のお客様の来所法律相談も初回無料としています。

最後に

グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。
宅地建物取引業者の皆様は、ぜひ、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の顧問契約締結や、アネットクラブへのご加入をご検討ください。
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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 野田 泰彦
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