Wマンションの入居者に、ベランダから毎日野鳥に餌をやるのを日課しているSさんがいました。Sさんは動物愛護の精神から趣味でやっているということで、ご本人は満足なのですが、その一方で迷惑を被っていたのはマンションの他の住民たちです。

それというのも、Sさんの行為は数年に渡って続いており、毎日50羽から100羽の野鳥が飛来するようになっていたため、その糞、羽毛によって他の住民はベランダに布団も干せず、また、羽音や鳴き声も相当なものだったのです。

Wマンションの管理組合は、何度もSさんに餌付け行為をやめるようお願いしてきましたが、Sさんは全く聞く耳を持たず、平然と行為を続けました(なお、Sさんは、部屋の所有者ではなく、持ち主からその部屋を借りて住んでいる人でした)。

そこで、Wマンションの管理組合は、Sさんに対し、マンション住民全体の共同の利益に反する行為をしているとして、部屋の持ち主とSさんとの間の賃貸借契約を解除し、Sさんがその部屋から出て行くよう求める裁判を起こしました。

このような裁判を起こすことは、マンションの区分所有者及び議決権の4分の3以上の多数決(特別決議と言います)で決めなければならず、Wマンションの場合もこの特別決議を経て決定しました。
裁判では管理組合の主張が全面的に認められ、Sさんは部屋を出て行くことを命じられました。
こうして、Wマンションの住民の皆さんに、久方ぶりの平穏な日常が戻ってきたのです。