紛争の内容
依頼者は、三人姉妹の長女で、父が生前やっていた店舗(敷地となる土地及び建物)を引き継ぎ、その店舗で営業をしておりました。父の遺言はなかったため、父の死後、妹2名からは依頼者に対し当該店舗も含めた遺産分割調停を起こされましたが、特に弁護士には相談をせず、「自分が店舗を引き継いで営業していたので当然自分がこの店舗を単独相続できるだろう」と思っていたところ、結局審判に移行し、全ての不動産について法定相続分での持分(1/3)が認められるにとどまる結果となりました。その後、さらに今回の紛争となる共有物分割訴訟が起こされ、妹たちは「当該不動産は形状の問題から現物分割に適さない」として、競売を前提とした代金分割を強硬に主張しました。しかし、店舗をやっている依頼者は、このまま営業を続けたいとして現物分割を望んでいたため、弁護士に依頼することとし、妹たちと主張を争うことになりました。

交渉・調停・訴訟などの経過
訴訟では、当初やはり妹らから現物分割には適さない旨の主張が強硬になされましたが、当方からも不動産屋の意見等も聞き、現物分割であればどのような分割方法が適切か、分割により店舗の価値を損なわないようにするにはどの程度の調整を要するか、を議論し、裁判所からの説得も実って現物分割が可能との結論に至りました。

本事例の結末
結果として、依頼者は店舗の営業も続けられた上、測量等の実費も妹らに負担させることができたため、損失を被ることなく、共有物の分割をすることが出来ました。相手方であった妹らも、分割後に単独取得した不動産部分を売却することができ、双方にとって利益のある和解をまとめることが出来ました。

本事例に学ぶこと
本件では、当初相手方も強硬に競売(代金分割)を主張していたものの、代金分割が最後の手段であり、現物分割でも双方にとって利益があり、かつ実現可能性があることを主張していくことで、和解を成立させることができました。双方にとってWin-Winの和解を成立させるためには、そのために必要なリサーチ(本件の場合は不動産屋の意見)が重要になってくると感じました。

弁護士 相川一ゑ